夢幻ノ徒花
[奇を以て勝つ《後編》](1/5)
「ここが、萩」
京から長州・萩、遥々やってきた
と、言いたいところだが、鬼の力を使えば3日足らずで着くのが現実だ
晋作の実家があるという菊屋横丁の屋敷の前で立ち止まる
門を叩こうとした所後ろに人の気配を感じた
袖のクナイを取り出し、前を向いたまま相手の方へ構える
「せっかく見つけたから声をかけようとしたのに、物騒なもの閉まってもらえる?」
「済まない、気づかなかった」
振り返ると吉田が不機嫌そうに眉を顰めている
「晋作なら此処にはいないよ」
うんざりと言ったふうにため息をつくと続ける
「浮世を棄てて、山の庵籠っている」
「晋作らしい」
袴で男装姿の千明を一瞥する
「さ、行こうか」
「連れて行ってくれるのか?」
「場所分かるの?」
なんだかんだ言って、彼は優しいのだ
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