晴れ間がさして
[風邪](1/3)
額のひんやりとした感触に意識が戻ってくる。
逃がしようがなく篭った熱を吸い取られていくよいで気持ちがいい。
「……しゅうと…?」
「…おはよ。真雄、お前熱あるみたい」
ひんやりとしたものの正体は秀斗の手の甲だったらしい。
「…うん…少し暑いかも……」
「会社、行けるか?」
「うん、大丈夫だと思う」
「…悪かったな、なんか無理させちまった」
秀斗が申し訳なさそうに言う。
「秀斗せいじゃないよ」
真雄は首を横に振った。
だが、昨日のずぶ濡れと風邪を結びつけたのは疲れだと真雄は思った。
「今6時。真雄何時に行く?車で乗せてってやるよ」
「大丈夫だよ。歩けるよ。近いし」
実際、熱はそこまで怠さを帯びたものではなく、微熱というぐらいだった。
「いや、送らせて。風邪引かせたし」
しかし秀斗はやはり責任を感じているようで、送ると言い張った。真雄はなんとなく予想をしていたため今更驚くことなく、言葉に甘えることにした。
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