火竜に継ぐ唄風

闇からの最悪の救世主(メシア) ( 1 / 1 ) 



  リオスがこの村に住み着いて約二週間。珍しく日光の光が肌に感じるほど暖かい快晴の空に囲まれた朝と昼が混じるころで村人の大体は村のある一ヶ所に集まっていた。観覧するように女性や子供に囲まれたそこには屋根の修理と雪降ろしのために働く力強い村人の姿があり、そこには頭防具を除いたマルモフシリーズに身を包んだリオスも混ざっている。

「おーぃ! リオスー そこの木材取ってくれー!」
「これか?」

 村人の必死な声に答えてリオスは側にあった自分の身長よりも長く太い木材を持ち上げ、体を捻り膝を曲げて狙いを定めると大きく振りかぶって片手で屋根にいる村人に投げ付ける。ちなみに普通の人だったらそんな事は不可能だ。

木材は回転することもなく綺麗な弧を描いて宙を跳び、屋根に穴を開けることもなく厚く積もった雪が着地による衝撃を吸収する。

 軽がると大きな木材を投げたリオスに村人は木材の曲線に目を合わせ、驚きを隠せずそれぞれの声を出した後に拍手をする。リオスの腕力と技術も凄いが厚い雪がすでに乗っている屋根は今も耐えていることにマナカは村人の間から眺めて感じていた。

「ありがとなー!」

 雪のなかにめりこんだ木材を立てると、屋根の上で村人はリオスに手を振る。
 ザクザクとスコップで雪を降ろす音に屋根の修理でリオスが屋根に投げて乗せた木材に釘を打つかなずちの音。さらには雪が下に降ろされた音の中で作業はどんどんと進んでいく。

「それにしてもリオス、凄い力持ちだよね」
「え!? あぁ……」

 突然背後から話し掛けられたマナカは飛び上がるように驚き反射的に後ろを振り替える。話し相手が分かったとたんにマナカは安心した声が質問の答えと同時に漏らしてしまう。
 話し掛けてきたのはリオスを助けるためブランゴに襲われて意識を失いながら村へ戻ってきたマナカを目を覚ますまで看病をしてくれた村人だった。

「そういえばマナカちゃんこの村で一番の力持ちなのになんでここにいるの?
 雪掻きのスピードも早いし……」
「それがね……」


 話は数時間前に戻る。
 一軒の家がしばらく雪掻きを怠っていたためか、雪の重みに耐えきれず屋根の一部に穴ができてしまった。不幸中の幸いで家が潰れなかっただけまだマシだ。

 その屋根の修理のために今、屋根を直す環境を作るために村人が集まって雪掻きをついでながら手伝っているのだ。

「私も手伝いますー!」

 雪掻きをする光景を見てマナカもスコップを握り締めたが。
「いや、これは男のリベンジだ」

 とまだ雪山草の採取のことを気にしているのか結局のところ参加させてくれなかった。
 そのことにマナカは頬を膨らませ少しいじけるふりをしてみたがまったく相手をされなかった。
 逆に村人からの信頼が出てきたリオスがスカウトされ、屋根の上に上ることになった。リオスにとって初めての雪掻きに誰もが期待を抱いていたが、屋根の斜面と崩れるような足場の雪に足を滑らせて屋根から落ちることが二度ありスコップで雪を掻くことすら出来なかった。
 普通なら大怪我をしてもおかしくないが、リオスは軽く痛みが出ている程度に見えて背中など押さえていて自らの失敗に頭を掻く。それでも崩れない髪型のようにリオスは雪掻きを再開しようとする。
 しかしながら村人にいつしか身が持たないと判断され、あっという間に雪掻きの仕事を解任(クビ)。屋根の修理に使う木材を運ぶ仕事を任命された。

「へぇー 男ってそういうところで変な意地を見せ付けるんだよね」
「まぁ、そうだけど。あの荒技から見て皆リオスに完敗じゃない?」
「たしかに…… てか、マナカもあれは流石にムリだね」
「ちょっと悔しいけどね」
「あれ……ヤキモチ焼いてもいいんじゃない?」
「焼かない焼かないー」
「焼いてもいいじゃん。ポッケ村一番の力持ちのプライドにかけて……」
「そんなプライドかける気もないしいらないです」
 リオスはせっせと木材運びのついでに雪掻きで落ちてきた雪を片付けていたりしてそれなりの活躍をしていた。
 一方、マナカを含めた観覧者たちは飽きずに彼らの仕事っぷりを見ているものもいれば、飽きてきたのか隣同士と話し始める者もいる。話題は全く別の話をしている人がいたり、リオスを含めた男たちの話題が出てくる。

「……なんだこれ? 見せ物か?」

 一向に一人ですら帰らない状況に囲まれているリオスは疑問に思った。

「まぁ、まぁ、そんな気にせずに……」
「気が散るんだが…… てかお前もこいよ」
「えー やだよー」

 リオスはスコップを雪に刺して立てた後、少し困ったようで呆れたような表情で村で一番信頼しているマナカにお願いしたが、マナカは悪戯っぽく応答をした。
 周りの視線もあったため、仕方なくため息をついてリオスは戻ろうとする。珍しくこの天気での気温では白い吐息は出なかった。マナカは一足先にリオスの刺したスコップの元へ走りだして取っ手に手を伸ばして雪から抜く。

「私も手伝うよ!」
「……はっきりしろよ」

 マナカの悪戯な笑顔につられてリオスは微笑みを返す。
 マナカも参加して降ろした雪にスコップを差し込み荷車に積んで雪を村の外へ出す。二人になったことで作業の効率が良く山のように降ろされて積もった雪は減って屋根で頑張っている男たちも傾斜に気を付けながら雪を降ろしていき、気が付けば太陽は真上を通って明るい日差しを差していた。
 気温は上がり、少しマルモフ装備を着ているのが暑く感じるほどだ。

「そろそろお昼にするか」
「そうだねー」

 屋根と地上での意見が一致して一旦作業を中止する。雪掻きといっても積もっている雪の量によってはそう簡単に終われるものではない。スコップで掬える量も限られるし傾斜で滑らないように足に注意を払わなければならない。今回のように潰れる心配性があり下手に屋根に負担をかければ穴がまた一ヶ所開いたり最悪の場合、家が潰れて屋根にいる者は地上に叩きつけられて逆に下にいる者は下敷きになる恐れもある。

 マナカは家の近くでスコップを刺して先に下りた男子陣と観覧していた女性と子供がいる陣の村人たちへ近づこうとしていた。

「ん?」

 落ちてきた雪解けの雫と屋根の違和感にマナカは立ち止まった。そのときだ。
 木材の屋根を擦りながら滑る音と同じにマナカの頭上の屋根から突然大量の雪が姿を現わして空を覆い隠すようにマナカへ襲い掛かる。

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