霞月-カスミツキ-

月の、欠片が降って来たの。


≠欠片(カケラ)(1/4)


それは、不思議な光景だった。

まるで童話から抜け出して来た様な、
はたまた、月の一部が溶けてできたみたいな、
儚げな、綺麗な男の子。
椅子にゆったり腰掛けて切れ長な目を、少し細めて、遠くを見ている。
細く、長く伸びた手足は、彼があまり運動していないことのあらわれ。

印象に残ったのは、黄味掛かった、銀色の髪だ。

病院のビルの屋上で
夜風にさわさわと揺れてる髪は

まるで、月からの贈り物のようだと思った。

「風邪が心地良いな」


その彼が、どこか遠くを見つめたまま、口を開いた。

思っていたよりも、低い声。


「こっち、来れば?」


そこで初めて、物陰に隠れていたあたしに話しかけているんだと、気が付いた。



あたしはゆっくりと彼の方へ近付いた。

薄い影が、コンクリートの上に出来ていて、それもあたしにあわせて動く。


彼は、あたしとの距離が2メートルほどになったところで
こう尋ねた。

「死にたくなるほど闘病生活が辛いのか?」

「はい?」

あたしは意味をくみ取れずに
尋ねかえした。

「自殺、するつもりなんだろ」


さわわ、と夏の風が
二人の間をぬけてゆく


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