それは、不思議な光景だった。
まるで童話から抜け出して来た様な、
はたまた、月の一部が溶けてできたみたいな、
儚げな、綺麗な男の子。
椅子にゆったり腰掛けて切れ長な目を、少し細めて、遠くを見ている。
細く、長く伸びた手足は、彼があまり運動していないことのあらわれ。
印象に残ったのは、黄味掛かった、銀色の髪だ。
病院のビルの屋上で
夜風にさわさわと揺れてる髪は
まるで、月からの贈り物のようだと思った。
「風邪が心地良いな」
その彼が、どこか遠くを見つめたまま、口を開いた。
思っていたよりも、低い声。
「こっち、来れば?」
そこで初めて、物陰に隠れていたあたしに話しかけているんだと、気が付いた。
あたしはゆっくりと彼の方へ近付いた。
薄い影が、コンクリートの上に出来ていて、それもあたしにあわせて動く。
彼は、あたしとの距離が2メートルほどになったところで
こう尋ねた。
「死にたくなるほど闘病生活が辛いのか?」
「はい?」
あたしは意味をくみ取れずに
尋ねかえした。
「自殺、するつもりなんだろ」
さわわ、と夏の風が
二人の間をぬけてゆく
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