♯刹那を信じても虚しく
♯[ひとつめのおはなし。](1/3)
逃げても逃げても逃げても…
ツェリが大丈夫だって言うから、私はまだ目も開いていないアルビノの羽を千切って持ってきてしまった。


天国には季節が無い。ただ四季の花や果物が年中溢れ乱れるように実っていて、鳥達が高らかに唱い、よく晴れた春の午後を演出していた。


そんな陽気な天候とは裏腹に、私は雨でも降って欲しい気分である。

詰まっている。

何が?と聞き返したくなるだろうが、聞き返したいのは私の方だ。朝、いつものようにスプリンクラーのコックを開けようと水場に足を運んだ私が目にしたのは、丁度コックの真下にある筈のポリバケツ大の穴に白くてべちゃべちゃな何かが詰まっているという紛うことなき事実だけ。


最初、犬でも詰まっているのかと思ったが、隙間から茶色掛かった毛髪が見えたため、直ぐに獣ではない事が解った。

詰まっていたのは天子だった。

私は手に持っていたスコップやらホースやらを放り出し、その汚く濡れた塊を一思いに引き抜いた。


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