我が家の長男物語
[「優也くんは幼稚園どうするの?」](1/9)
優也の幼稚園を決めるとき、いろんなひとが私たちに聞いてきた。
「優也くん、幼稚園どこいくの?障がいもあるし、いれてくれるところありそう?」
「これから見学して決めようと思ってるんです。優也に合ったところがいいので」
お母さんは優也の自閉症のことをまわりに隠さず、普通に伝えていた。
でも、それをお父さんは嫌がっていたらしい。
幼稚園の見学前日。
お父さんとお母さんは喧嘩をしていた。
私はそのとき、小学一年生だった。
けんかがはじまる。
そう感じると、私はさっと子供部屋に優也を連れて逃げていた。
怒鳴り声や、キンキンする声は私も優也も苦手なので、けんかが始まりそうになると、二人で隠れていた。
「美沙ちゃん、美沙ちゃん…」
「ん?」
(この歳、優也は私のことを美沙ちゃんと呼んでいた。)
「…ママ、ママ、うーうー?」
「うん、…そうだよ。しーだよ。しー…」
優也は親の声にビクビクしながら、私の隣で震えていた。
優也のいう、「うーうー」はけんかのことをさしているらしい。
まだ言葉がうまく使えないので、私とお母さんでその意味をなんとか考えていることなんて日常茶飯事だった。
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