エース (1/1)
君は、男子バスケットボール部のエース。
私は、女子バスケットボール部のエース。
「拓真!勝負しよう、勝負!」
「由加、いい加減諦めろ。俺には勝てないからなっ」
ふんっと鼻をならす彼。
でも、しゃーねーなって勝負にのってくれるんだ。
そんな彼に惚れてることは、私だけの秘密。
今までも、これからも。
「よし、んじゃ今日は、スリーポイントにしよう!先に外したら負けー!」
「負ける気がしねー」
彼は笑って、ボールを飛ばした。
まっすぐリンクに収まるボールに思わず見とれる。
「次、由加な」
「え?あ、うん」
────ガンッ
鈍い音をたてて落ちるボール。
「おま、一回目で外すなよ!」
「……………」
びっくりした表情で笑う彼。
悔しい…
焦って投げたからだ…。
「……………」
無言の私に気を使ったのか、彼は、私の頭に手を置いて、
「左手に力入りすぎてたかな」
と言って、体育館から出ていった。
────このままじゃ帰れない。
「よーし!声出していくよ!」
「「ハイッ!」」
次の日の部活の時間になった。
いつも通りメニューをこなす。
「今日はここまで!」
「「ありがとうございました!!」」
ふと目にとまった彼の姿。
「拓真!」
「お、由加。またか?」
「今日も、スリーの……」
バタン。
私の意識は遠退いていた。
何となく、彼の声が聞こえた気がしたのは夢なのかな…?
───パチ。
目を開けると知らない天井。
つうんと、薬品の匂いがする。
ここは保健室だ。
私、そう言えば倒れたんだっけ…
手に温もりを感じる。
ふと見てみると、私の手を握ったまま寝ている彼。
「拓真?」
「………由…加?…由加!大丈夫か!?」
「うん、大丈夫。」
「お前無理して…。昨日居残って、スリーの練習でもしてたんだろ」
「…………」
図星。何も言い返せない。
「ごめん、みっともなくて…」
「…っ、ちげーよ!心配だろうが!!!!それくらい気付け!」
「………え?」
「バスケしてるときの由加は、キラキラしてる。そんな由加を見てたいから」
「…………ん」
ぐいっと引き寄せられる。
男らしい胸板にドキドキする。
男の子…なんだなぁ。
「拓…真?」
「怒ってごめん。」
「心配かけてごめん。」
「…由加」
拓真は、何だか切なそうな顔で私を抱き締めたあと、私の耳元で、「すき」って囁いた。
私は、大好きだったから、その代わりに拓真の頬にキスをした。
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