【捧げもの集】
[ギールとライアB](1/4)
「・・・」
手元でバチっと火花が飛び、ギルディアスは変形したそれを素早く薬品に漬けた。
ゴーグルを額にずらすと、止まっていた息を勢いよく吐き出す。
彼の薄暗い作業部屋には、蒸気をリズミカルに吐き出す機械の音が響くだけだ。
繊細な作業をしているのかと思いきや、今度は上の棚に手を伸ばし、手探りで太い金属線を掴み降ろした。
右足を机にかけるような格好でそれを踏み付けると、力技で曲げ始める。
…と、その揺れで机の上の物がカタリと音を鳴らした。
不穏な空気は的中し、引っ張られるように一直線に転がり始める。
「待っ…だだだだ…っ」
ギルディアスが伸ばす手も虚しく、机の端を飛び出して。
ーガシャンッ…!!!
音こそ小さいが、床の上で確かに何かが破損した音が響いた。あちゃぁと声をあげ、ギルディアスは慌てて駆け寄る。
「…、っ…!?」
しかし落ちた物を拾い上げた途端、その目が見開かれた。
彼は幽霊でも見たかのような表情で固まり、薄く唇を動かす。
「…開いた…」
無意識のままに、ぽつり、と呟いて。
「…開いた!!!」
「開いたぁぁ!!!」
「ええええい喧しい!!扉を壊す気か!!」
机に書類を叩きつけながら、ライミリアンが立ち上がる。
「何でお前が向こう道にいる辺りから既に声が聞こえるんだ!!」
「らららライア!!開いた!!」
迷惑な勢いはいつものことだが、ギルディアスは相手の二の腕に掴みかかるようにして息を荒げる。
その様子に流石のライミリアンも眉を顰め、彼の差し出す物を見た。
「な」
そして、同じく言葉を詰まらせた。
決まった操作を行うことでしか開かない箱を『秘密箱』という。中でもより高度な物は、無理矢理破壊した場合、中の物が駄目になる仕掛けが施されている。
ギルディアスが手にする物もその一つではあったが、作った人間が人間だけに、秘密箱の域を超えたものだった。
高度過ぎるカラクリ仕掛けで封じられた箱。
製作者の名を、知らぬ者はいない。
ゼヴェルト。
チェンバレンの発明家であり、…ギルディアスの義父だ。
- 30 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
[編集]
[←戻る]