ウイルスゲーム
ゲ (1/9)
「涼汰が自分を選ぶなら、俺はこのまま刺すよ?」
由佐のナイフの先が百合の背中へと触れる。
その感触を感じながら、百合は涼汰の目の前まで来た真優を見上げた。
その手に握られた凶器の矛先は、涼汰へと向いている。
百合は思う。
涼汰が‥‥刺される位なら‥‥。
涼汰がいなくなる位なら‥‥。
自分が‥‥。
だが、恐怖で固められたその心からは、言葉が出て来ない。
大好きな人を失う恐怖、自分が犠牲になる恐怖、百合は、涼汰の背中へと抱きつき、震える体を落ち着かせようとするが、それは酷くなるばかりだ。
どうして‥‥言えないの?
どうして‥‥言わないの?
涼汰を刺さないでって‥‥。
私が犠牲になるって‥‥。
「百合、ごめん、約束守れそうにない。」
涼汰の手が、背中から回された百合の両手を握り締めた。
「だけど、百合は俺が守るから。」
そして、その手は無理矢理離された。
「百合だけでも、ここから出て。」
涼汰が真っ直ぐに真優を見つめ、そして、告げる。
「俺を刺せよ。」
その瞬間、真優はその大きなナイフを振り上げた。
「涼汰!!!」
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