ウイルスゲーム  
  ル (1/30)


ある一室にて。


一歩ずつ後退り‥逆に一歩ずつ近付こうとする影が二つ揺らめいていた。


「ちょっと‥‥止めてよ。あんた、頭がおかしくなっちゃったの?」



背中がついに壁へとぶつかり、彼女は逃げ場を探すように目を泳がせた。



「ふふっ、おかしいのは私じゃなくて、あ・な・た、でしょ?」



その手には、スタンガンがしっかりと握られていた。



そして、彼女は振り上げた。



バチバチバチッ



「ギャァァァ‥」


思ったよりも暴れ出した強い衝撃に持つ手が震えたが、彼女は決してそれを離さなかった。



ドサッ―



醜い叫び声を上げていた彼女は、床へと吸い込まれていった。



「ふふふっ‥いい様だわ、千秋。」



気絶している千秋を仰向けにし、彼女は笑う。



『あんたが‥‥‥美姫を騙して殺したんじゃないの?』



頭の中を駆け巡る言葉。



「もう一度言ってみなさいよ、ほら?」



ギリッと倒れた彼女の手のひらに足を乗せ、体重をかけるが彼女は起きる気配がない。



「あんたにも、私の気持ち味わってもらうからね?」



倒れたままの千秋のスカートのポケットをまさぐり、紙切れが指先に触れると結はニヤリと微笑し、それをまた戻した。


そして、普段あまり使わないだろうジャケットの方の内ポケットへと手を忍ばせる。


「人を簡単に疑う人はね、誰からも信じてもらえないかもしれないよ?」


悲しげな表情を浮かべ、彼女はそのまま部屋を後にした。




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