愛月撤灯
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「ミヤビ、お前カウンター中入れ。」

『はぁ?』

「酒くらい出せるだろ。」

拒否する間もなくケイさんはお客さんをカウンターに案内して、私を見る。

『ーーいらっしゃいませ。』

何をどうすればいいのか。

初めて入ったカウンターはピカピカに磨かれてる。

いつもシュンが座ってる椅子が隅にあって、シュンのタバコが置いてある。

シュンの場所だ。

「これ、着とけ。」

渡されたのは黒のパーカー。

『はい。』

何で大人しく従ってるのか。

「仕事帰り?」

お客さんは楽しそうに私を見てる。

『ーーはい。すみません、ちょっと待って下さいね。』

パーカーを羽織って袖を通してーー安心感に包まれた。

これ、多分シュンのだ。

「この店人遣い荒いから。
後で給料請求しなよ。てかシュンは?」

お客さんはケイさん見ながら笑ってる。

「シュンはサボりです。
代わりにソイツこき使おうかと。」

「あぁ、シュンの彼女?
贅沢だねこんな可愛い子。」

「シュンのくせに生意気でしょ?」

あーぁ、ケイさん勝手に言っちゃったよ。

ちょっとやめて欲しい。

シュンは嫌がるだろうし私がバラしたなんて思われたくもない。

『何飲みます?』

オーダーを聞いてグラスを出す。

何か変な感じ。いつもシュンが見てる景色を私も見れてるんだ。

「ミヤビ!灰皿新しいの持ってきて!」

ケイさんがこっちを見てる。

当たり前のようにこき使いやがって。
セット料金とってやろうか。

『よく来るんですか?』

仕方なく《 接客》を始める。

「仕事帰りにね。シュンに愚痴聞いてもらいに。」

ーーへぇ。

「あれで聞き上手だから。」

『なんか分かります。』

「でも自分のことあまり話さないから。
彼女が見れるなんて今日来てよかった。
もしかしてーー《 華音》の子?」

『そうですけどーー』

「あぁ。やっぱり彼女だったんだ。
この前、時間ある時使ってやってください。って言われたから。」

本当に声、掛けてくれてたのか。

一緒に飲みながらシュンの色々な話を聞いてたらドアのベル音。

『いらっしゃーー』

一応の仕事モードで入口を見ると、シュンが私を見ながら苦笑いしてる。



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