愛月撤灯
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タクシーに乗った瞬間、どうしようも無くなってシュンの膝に身体を預けた。
せめて。
せめてこれだけでもさせてーー
本当は期待してる。
触れ合えば気持ちが変わってくれるんじゃないか。なんて。
「ーー。」
黙って手を差し出してくれるから、その親指を掴んだ。
ーー何なんだろう。この安心感。
『 可能性、1ミリもない?』
「本心を言うなら無いわけじゃない。
今までそういう気持ちで見てなかったから。
何か変わるかも知れないしーーでもそれって俺にとって都合が良すぎるなって思う。」
『 ーー。』
「だから何も言わない方がいいんだろうなって思ってる。」
『 頑張りたい。って言ったら迷惑?』
もう、泣きそうだ。
男に縋るなんてーー
「ミヤビ、」
頭を撫でられて、思わず顔を見た。
「俺、そこまでの価値ないよ?」
あるよ。
そこまで以上に人として格好良い。
「ミヤビならもっと良い人いる。」
『 ーー違う。シュンが良すぎる。』
「こんな人間に構うくらいならもっと良い人の所に行った方がいい。」
『 ーーシュンがいい。』
「なんかーー申し訳ないな。」
罪滅ぼしのつもりなのか。
声が優しい。
『 《JEKYLL and HYDE》、行ってもいい?』
「来いよ。頑張りたいんだろ?
しっかりアピールしに来い。」
『 頑張るーー。』
今はこれで満足するしかないんだろう。
会うことは出来る。
それだけでとりあえずは良かった。
そう思うしかない。
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