愛月撤灯
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思い返せば前シュンが私に頭を撫でさせてくれた時。
あの日もシュンは傷ついてた。
そんな姿を見せてくれたからだろうな。
私がシュンに弱音吐けたのは。
『 寝る?』
しばらく無言を共有してから声を掛けた。
ゆっくり頷いた後、少し気まずそうに身体を起こす。
「ーーごめん。」
『 いいの。』
電気を消して布団を捲った。
先にベッドに寝転がったら、
『 ーー痛ッ、』
ついぶつけた腰に体重をかけた体勢をとってしまった。
「ミヤビ?」
『 ーー忘れてた。』
暗闇の中腰に手をやる。
左の骨盤の上あたり。
「もしかして、さっきの?」
『 あー違う。』
気にされたくないなら嘘をつく。
それなのに、
「ごめん。」
『 違うって。おいで?』
立ったままのシュンの腕を引く。
抱き締めようと頭に手を伸ばしたら、
「それは嫌。」って。
「頭上げて。」
《 顔、上げて。》
頭をあげると腕を伸ばしてくれた。
《 ちょっと、男らしいことさせて。》
《 ーー。》
《 ーーいいね、これ。》
《 どういうこと?》
《 やってみたかったこと。》
腕枕ーー。
「痛い?」
腰に手を当てられて、首を振った。
痛い。ーーけど、痛くない。
「ごめん。」
大きな手。
男らしい、シュンの手。
細身だけどしっかり肩幅だってある。
『 ありがとう。しがみついていい?』
「うん。」
ぎゅっと力を入れて腕を回すと、微かに笑う声が聞こえた。
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