恋に落ちるその日まで-3rd-
[疑惑と八つ当たり](1/12)
腕時計は7時を指した。
そろそろ残業組も片付けを始める頃で、ぼちぼち…自分たちのいない異様な状況に
気づいて欲しい…
「・・・・」
「・・・・」
「…ごめんね?レオくん…」
「また謝るし…ごめんくないですって」
「でも、私がこんなことお願いしなかったら、レオ君はもう帰れてたのに…」
しゅんっと落ち込む栞を横目に、礼央が小さくため息をつく。
「だから、栞さんと2人きりになれて…俺はむしろラッキーなんですけど?」
「・・・レオ君の気の使い方がヘタクソすぎる」
「は!?どこが!?」
「だって…好きなわけないじゃない。知り合って間もない私のことなんて。きっかけがない」
積まれた段ボールを椅子代わりに腰掛ける栞が、苦笑して見せる。
礼央と出会ってまだ2週間程度だ。
一目惚れだ!と言ってしまえばそうなのかもしれないが、この2週間で特にときめくような出来事も無かったはず。
何を思って礼央がそう言うのか…
と、やや拗ねたような、照れたような表情で
礼央が言った。
「ありましたよ…きっかけ…。つーか、ここでバイト始める前から…見てたんで」
「…え?どこで?」
疑問符を浮かべ、大きな瞳で礼央を見つめた。
- 62 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
⇒作品レビュー
⇒モバスペBook
[編集]
[←戻る]