ディヴェルトの英雄
[4章 落ちこぼれ女神の大切なもの](1/56)
ジラとキリラルの国境である結界を抜けると、紫色だった空が元の色へと戻り、雲も緑から白になった。

ジラのごちゃごちゃとした建物の多い圧迫感とは違い、見えてきたのは正反対と言っていいほどのどかで広大な草原だった。

「わあー! ジラとは全然違う!ここって――」

リサラはいつもの通り窓を開けて景色を眺めていた。そして彼女が「ここってなんていう国?」と言う前にギアナが説明を始める。

「ここはキリラルっていう女神族が住む国だ。ちなみにこの国の英雄はソフィアな」

……ふーん。ていうかギアナ、乗り物酔いは大丈夫なの?」

少し小馬鹿にしたようにギアナが言ったことにより、リサラは不機嫌に顔を歪めた。しかし彼が普通に車で過ごしていることに疑問を持った。いつもの彼ならぐったりしているはずなのに澄ました顔で座っている。

「ん? ああ、今回は乗る前にちゃんと薬飲んだから大丈夫だぜ」

「やっと学習したんだね」

「お前にだけは言われたくねえよ勉強嫌い!!」

「うるっさいわね! 一言余計よ!」

いつも通りのやりとりをしていると、車のスピードが落ちる。キリラルの関所についたのだろうか。

そしてジラと同様に窓が叩かれ、関所の人が声をかけてきた。

「通行許可証を拝見します」

「え、通行……な、なに?」

「通行許可証だ。お前女王さまにもらってなかったか?」

「え? ああ!」

リサラは関所の役人が言ったことを理解できずに混乱し、ギアナがフォローを入れる。

理解したリサラはごそごそと懐を漁って、大事に持っていた古びた紙を取り出した。女王であるリアスからセルを出発するときに持たされたあの紙切れである。




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