僕が引きこもりを始めたのには理由がある
[恐怖のはじまり](1/1)


 え、これだけ? 何のことかわからない。

 メッセージの横にある時刻を見ると、十分前となっていた。ほんの少し前だ。

 トシカズから追加で推測とか意見とか、そんなメッセージは送られてきていない。とりあえず共有――以上。素朴なヤツらしい行動だった。

 いつもならここで、お笑いタレントの台詞スタンプで『それで?』って返すんだけれど、いまは出来ない。関係は断絶されているんだから。

 気になって眠気も覚めてきた。誰か返さないかとイライラしていると、早速返事があった。

――――――

(あい) 『ナニコレ〜?』

――――――

 いま公開している映画の主人公でお姫様のキラキラスタンプ。アイだった。お喋りは反応も早い。

――――――

(トシカズ)『わからない。突然きた』

(あい)  『ダレから?』

(トシカズ)『雪谷から』

――――――

 雪谷《ゆきたに》は同じクラスの男子だ。サッカーが得意でフォワードとして活躍している。ただし隣町のサッカークラブでの話。そのチームに移籍したトシカズとは、友達として繋がっているみたいだ。

――――――

(あい)  『いきなり来たの〜?』

(トシカズ)『うん、意味分かんない』

(一夜)  『ぞーんび! にゃ!』

――――――

 いきなり一夜《イチヤ》が入ってきた。しかも挨拶代わりの猫娘ゾンビスタンプとか、意味がわからない。しかもこのキャラはイチヤのお気に入りだったりする。

――――――

(一夜)  『名探偵登場……って、これ何! 意味不明なんっすけど!!』

――――――

 イチヤはSNSの中だけはやたらと話す。おそらく、いろんな性格のキャラになりきって、喋ってるんだと思う。

――――――

(トシカズ)『うん、意味分かんないんだよ。だから相談したくて』

(一夜)  『雪谷からワレタって!! 何か暗号かなあ?!?!』

(あい)  『いーちーキーた! ばんこんわ〜』

――――――

 若干、アイだけが一人ずれている気がする……そこへさらにメンバーのラスト一人がやってくる。僕は何故かドキッとした。

――――――

(マリア) 『ねむーい。わお。みんな揃ってなに盛りあがってるの?』

(トシカズ)『おーマリアだ。』

(あい)  『まりまり〜★』

(一夜)  『にゃー! 揃ったね!! あ、一人足らないけど!』

(マリア) 『いま見たよ……うん、イチヤに賛成。イミフだね。これだけ?』

(トシカズ)『うん、そうなんだよ。あ! まって、また続きが来たみたい』

(あい)  『ワクワク〜♪』

(一夜)  『(我は黙して待つナリ……)』

(マリア) 『……』

――――――

 僕も待っているうちの一人。その間にビニール袋の山から、飲みかけのペットボトルを探し出し、あぐらをかいた脚の上に置いた。

 メッセージが来ない。遅いな……トシカズ。

 パンタグレープのフタをひねって開けようとした時、送られてきた次の画像を見て、僕の手が止まってしまった。

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(画像の中のメッセージ)『オソワレタ……ニゲラレナイ……』

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