東京剣士
[あの時すでに](1/13)



「でねでね!土方さんはー、流し目色男」
「はっはは!流し目って〜……納得」


毎日帰宅すると、祈さんと今日会ったことや思い出話をしていた。

やっぱり新選組のみんなは、懐かしくて……


永倉さんが江戸にいるという知らせは、届いた。
けれどそれ以外は……

寂しいなんて言えないから、いつも楽しい話を選んで。


「土方さん、あの時まだ十代だったんだよなー。今思えばガキじゃんっ!」
「そんな頃からあの色気があったんだ〜」

今夜は祈さんが、みんなを初めて見たときのあだ名を披露。

俺のいない頃の試衛館の様子が、祈さんの声に乗って目の前に広がるようだった。


「はじめくんは……無表情女顔道場破り」
……長いな」

「若しくは、最強剣士老け顔」
「おいこら」「いてっ」

側頭部を小突く。

「えへっ冗談」

舌をちょろっと出して、可愛く笑う祈さん。
向かい合って、ひとしきり笑いあった。


初めて会った時、祈さんとこんな風に笑い合える日が来るなんて、夢にも思わなかったな。














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