赤い闇
[隣室](1/1)

その日の朝のこと。よく晴れている。雨、上がったんだな。そんなことを思いながら、ベッドに腰掛けた。そして、昨夜の夢を思い出していた。
(はぁ……あの女の子、誰なんだろう…同じ夢を見るなんて、何か不吉な事が起こらないと良いけど…)
トントン。ガラッ…
入ってきたのは、母さんだった。
「どう、調子は?」
「うん。さっきよりもだいぶ楽になったよ。」
「隣の病室の人とか、近くの病室の人には挨拶しておきなさいよ。………」
「え?あ、うん。分かった。」
その時俺は、母さんが、母さんにしか聞こえない位の小さな声で言った言葉を、はっきりと聞き取っていた。

−どうせ、ずっと長くこの病室にいる事になるだろうから…−

そして母さんは帰っていった。
俺は、母さんの言う通りに、隣の病室の人に挨拶する事にした。
トントン。
「あのー…隣の病室の神崎ですけど…」
するとその人が、ベッドからゆっくりと起き上がって振り返った。
「…!!あっ、君は…!」
そう、その人は、闇の中にいた女の子とそっくりだったのだ。
「…何ですか?」
「し、喋れるじゃん!!君、俺の夢に出てきたよ!!」
「はぁ?何言ってるんですか?ナンパならお断りします。てか、元から喋れますけど?馬鹿にしないでください」
うぅっ、冷たい…
「早く出てってください。邪魔なだけです」
「ごっ、ごめん…」
追い出されてしまった…でも、絶対に人違いじゃ無いはずだ!いつかそれを証明してみせる…!



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