ショーキ「赤のプリウス・・・。赤のプリウスどこだあ・・・。」
完全に荒れ果てた店内の中、ショーキはツカサのいる車を探していた。
鳥の絶望の数列(デストロイ・ナンバー)が屋上駐車場を崩落させたので、車はそこかしこにひっくり返っている。
瓦礫の下敷きにでもなってたらことだぞ。
そんな不安に掻き立てられながら、目を皿にして探していると、
ゴン!ゴン!
すぐ側から、何かを叩く鈍い音がする。見てみると、
ショーキ「ツカサ!」
両手を後ろ手に縛られ、猿ぐつわをはめられたツカサが、車のガラスに頭突きをしていた。幸い車は瓦礫に潰されてはおらず、横転もしていなかった。
ショーキ「よかった無事で!」
ロックのかかっていないドアを開け、手のロープと口のタオルを外してやりながら言う。
ツカサ「・・・ありがと。」
やってあげたことと釣り合っていない、素っ気ないお礼の言葉だったが、慣れているショーキはいちいちツッコまない。
ショーキ「気にすんな。俺も女の子に礼言われてまんざらでも」
ガッ!
突然ショーキがツカサをシートに押し倒した。
ツカサ「な、何すんの」
ショーキ「静かに!」
ー?ー
ツカサは訳が分かっていなかったが、ショーキは徘徊するゾンビの姿を一瞬確認したのだ。しばらく車内に息を潜め、窓から少し顔を出して、
ショーキ「・・・よし。もう大丈夫。」
ツカサ「一体何があったの?」
ショーキ「ちょっとヤバそうな奴が。もう行ったから大丈夫。」
ツカサを解放しながら言った。
ショーキ「俺、ちょっと約束しちゃったからさ。・・・5歳くらいのちっちゃい女の子。その子のお母さん探しにいかなくちゃなんねえから、しばらくその車の中に隠れてて。」
そう嘘をついてその場を離れようとした。その時、
ツカサ「力・・・強いのね。」
ショーキ「え。ああ、スポーツやってるし。痛かったさっきの?」
ツカサ「ああ、いや別に。」
ショーキ「そう・・・。ならいいけど・・・。」
今度こそユーヤ達と合流しようとした。すると、
ー!ー
いきなりツカサが、ショーキの腕を掴んだ。
ツカサ「私の事、どう思う?」
ショーキ「え!?どうって」
ツカサ「私、再来週いっぱいで転校するんだ。」
ー!ー
突然の告白に度肝を抜かれた。ツカサが続ける。
ツカサ「それで・・・今回無理矢理買い物に付き合わせたんだけど・・・。今日の私、どうだった?」
ショックが大きすぎて答えられない。それをマイナスに取ったのか、
ツカサ「やっぱりイヤよね。手も口も男より達者な女の子なんて。」
ショーキから視線を外して言った。やや悲しそうな顔つきだった。
それが内心ショーキを慌てさせた。
これ何か気の効いた事言わねえとマズイんじゃねえか?
ショーキ「その・・・ええっとあれだ、あれ。」
なるべくお世辞だと思われないように、慎重に言葉を選んで言った。
ショーキ「ワンピース選んでるときの顔、結構可愛かったぞ。」
ショーキも視線を外して言った。するとツカサが、後ろから抱きついてきた。
ツカサ「・・・ありがと。」
やっぱり素っ気ない返事だった。
ショーキ「じゃあ、そろそろ行くからな。」
抱擁を解き、ユーヤ達の元へと向かった。その途中、もう一度ツカサの方に向き直り、
ショーキ「お前んち、門限とかある?」
ツカサ「え?許可がおりれば・・・。」
ショーキ「晩メシおごるよ。正確には、俺の知り合いの大人だけどな。」
ツカサ「・・・期待しないで待ってるわ。」
そして、ようやく元の吹き抜けへと戻っていった。
ーー希望の数列(ホープ・アドレス)1189、慈悲の白騎士サラディンーー
そう記された希望の数列(ホープ・アドレス)を手にし。