わたくし、悪役令嬢みたいです
[夢を見ました](1/12)

ふわふわと浮いた感覚がして、「これは夢だわ。」と思うのは何時ものこと。

何時もの夢と違ったことは真っ白な空間にわたくしが一人ということ。

物心ついた頃からわたくしは度々夢の中で夢であることが認識できていた。

何時もは普通の夢で、日常の何気ない夢や可愛らしい動物が出る夢、空を飛んでいる夢など様々。

でも、今日の夢は少しいつもと違う。

何もない真っ白な世界に私は何もせず立っているだけ。

首を傾げて周りを見渡すけれど、何もなく。

足元も真っ白で、わたくしは一体どこにたっているのか、ふわふわ浮いた感覚だけが残る。

『どうも、神です。姿は無いので声だけお送りしてます。』

ぼーっとしていると、どこからともなく不思議な音声の声が降ってきた。

「神様?」

『そう、僕がこの世界を作りしリンネス神の神々の一人、ファントムさ。』

「ファントム様、、、。」

リンネス神はわたくしが住むデトラ王国が信仰している宗教の神で、その中のファントム神といえば、とてもいたずら好きの神と言われている。

恐れ多くもそんな神の夢を見るなんて、少し怖い。

『君のこれからの人生について僕は話に来た。』

どうやら、有難いお言葉を下さるようだ。

「はい。」

『そう、単刀直入にいうけど、君は悪役令嬢なのさ。』

「悪役令嬢?」

『そうさ!悪役令嬢というのは、いわゆる人と人との愛情を深く繋げるために必要不可欠な存在。』

人と人とを深める存在、そんな大層な役目をわたくしは追っているの?

でも、悪ってついていてあまり良さげな名前じゃない。

『必要悪という言葉を君に授けるよ!

必要悪って、それ悪いことするってこと?

それは、嫌。

「恐れながら、わたくしは悪いことはしたくありませんわ。」

『それは困る!』

困るって言われても、わたくしが困るのよ。

『僕は見たいんだ!乙女ゲ、じゃなくて、真実の愛を!』

おとめげ、って何?

何を言おうとしたの?

『とにかく、君は悪役令嬢なの!そうしないといけない運命にあるんだから!じゃあ、よろしくね!』

その声を最後に私の意識はプツンと切れ、目を開くと何時もの自分の部屋の天井が視界に映った。

さっきの夢、本当に悪役令嬢が運命なら、わたくしが何もせずともそうなるのでしょうね。

あまり深く考えないでおきましょう。

ただの夢かもしれないわ。

コンコンコンコン


「お嬢様?起きていらっしゃいますか?」


「えぇ、起きていますわ。」


わたくしの返事を聞いて入ってきたのは専属侍女のハマニ。


「おはようございます、お嬢様。今朝は晴天ですよ。」


「おはよう、ハマニ。なら、お外でお茶したいわ。」


「わかりました。学習時間の後に時間を取れるように手配しておきますね。」


はじめて夢を見たのはわたくしが8歳の時。

そして、この時のわたくしはまだわたくしを犠牲にする彼女の存在を知らないでいた。




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