ウラとオモテ(1/22)
夏の終わりだから、風が冷たくて。
その風に揺れる声をかけてきた人は、フードを深く被った人で。
それでも私にとってその人は、まさに私が今求めていた人だったから。
「…… 帰ろう?」
私の零れ落ちた涙を拭ってくれるのは。
白い肌に映えるピンク色の唇が動いて紡ぐ言葉は。
「れーな?」
唯一私に光をくれる場所は。
「こうっ、!」
洸しかいない。
潤む視界に洸を映しながら抱きつけば、洸は驚いたように目を見開いた。
でも、優しく腕をまわして抱きしめて返してくれる。
その温かさが私には一番贅沢なもので。
「なんで、ここに、」
「んー。帰りが遅くて心配だったのもあるけど、」
私のヒーローだから。
どんな時も輝いて見えるんだ。
「泣いてると思ったから」
「っ、」
「ウソ。早く会いたかったから」
悪戯に微笑む洸が。
私になんでも与えてくれる。
「っ、今、洸に会いたいなぁって、白龍の倉庫にいた時も早く帰りたいとしか思ってなくて、」
流れ落ちる涙を。
白く綺麗な洸の指が拭う。
「…… っ、嬉しい、」
ねぇ、もしも私が何かを守れるとするならば、
私は洸を守りたい。
洸も、らいさんも、薫さんも。
皆幸せになればいい。
「ふはっ、そんな事言ってもらえてる俺が一番嬉しいよ」
無邪気な笑顔を見せる洸にずっとそのままでいて欲しいと思ったんだ。
「よし、帰ろっか?」
「うん」
洸の言葉に頷けば、手が温もりに包まれる。
私と洸、二人並んで歩く影が伸びて。
夏の終わりと、冬の始まりを告げる。