月の印

[【三日月の涙】後編](1/8)


次の日の昼、ルナは再び公園へと足を運んだ。

アキラは若干心配そうにルナの後をついてくる。

公園に着くと、ルナは老人を探すが、そこに彼の姿は無かった。

ルナは昨日と同じベンチに座り、ひたすら待った。

アキラも今度は口出しせず、静かにルナの後ろで腕組みをして立っている。

30分程経ったころ、公園に老人が現れた。

その姿は、足下もおぼつかず、見るからにやつれて、今にも倒れそうだ。

老人はベンチの人影に気づくと、ポツリと言った。

「また来たのか。」

ルナは老人の方を向いて、自分の隣のあいた空間を指差す。

老人はそれで理解したように、ルナの隣に腰かけた。

風が足下の草を静かに揺らす。

「何でワシにかまう?」

老人が切り出した。

「……気になるから。」

ルナは相変わらず無表情で簡潔に答える。


「ワシにかまっても、良いことなんて1つもない…。

昨日はからかってるモンだと思ったが…。

そっちにも理由があると見える。」

老人は探る様に言った。

「………」

ルナは頭の中で考えをめぐらせる。

そしてしばらくすると、口を開いた。

「……何でホームレスなんてしてるの?」

老人はその問いに少し目を細めたが、静かに答えた。

「別に、やりたくてやってる訳じゃない。

行き場が無いからだよ。」

「……そう。」

ルナはあまり深入りしようとはしなかった。

今度は老人がルナに問う。

「お前は何でここにいる?

今日は平日の筈だ。

学校には行かないのか?」

「……行き場が無いのは私も同じ。」


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