月の印

[序章](1/2)


大きな城の薄暗い一室。
そこで、二人の男が会話をしている。

片方は口髭をたっぷりとたくわえ、丈の長い黒いマントに身を包み、部屋のほぼ中央に置かれた大きな椅子に座っている。

見た目は優しい老人そのものだ。

「この件、お前に任せるぞ。いいな。」

だが、発せられた太い声には有無を言わせぬ響きがあった。

「はい。」

返事をした男は椅子の前で片膝をつき頭を深く下げた。

無駄な肉のついていないスラっとした体系で、現代風のスーツに身を包んでいる。

その容姿は、10代後半といった所だろうか。

赤銅色の髪に少し隠れた彫りの深い綺麗な顔には、とってつけたような完璧な笑顔。

全くと言って良いほどかけ離れた二人だが、一つだけ共通点があった。

それは、背中から生えた大きな黒い翼。



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