翼を持つ者2 〜スリの少女サーシャ〜


[領主と友人](1/33)


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「アレン様」

呼ばれて振り向くと、そこには最近になってこの屋敷に雇われた下男が立っていた。

決して仕事は速くないが、まじめで良く気が付くと、あの方が褒めていたのを思い出す。

屋敷はそのまま仕事場も兼ねている。

部下である自分とこの下男が顔を合わす機会も多かったが、話しかけられたのは初めてだった。

だから少し驚いたが、困った様子なのも気になって、足を止める。

「なんだ?」

「すみません、お忙しいところ・・・少し、よろしいでしょうか?」

「ああ、構わないが?」

「主様をお見かけしませんでしたか?」

「それなら・・・」

実のところ、自分も探しているところだった。

この時間ならいるはずの執務室は空で。

今日は出かける予定などなかったはずなのに。

「どうやら出かけられたようだ。行き先の見当は付いているが・・・」



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