翼を持つ者2 〜スリの少女サーシャ〜


[スリの少女](1/10)


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白い石造りの建物が並び、夏の始まりの日差しをきらきらと反射している。

その日、街はいつもどおりの活気で、色とりどりの天幕が張られた市場には人がごった返していた。

王都に続く街道沿いのこの街は人と物の出入りが激しい。
遠い場所から行商人が運んでくる荷物、それを売り買いする人。
旅人も多いし、それを目当てに土産物や食事を振舞う店や宿屋など、とにかく活気と熱気がうずまいている。

サーシャはそんな市場を歩きながら物色していた。

いつもと同じように、足取りも軽く人々の間を縫っていく。

初夏の涼しい風が吹いて気持ちがいい、熱気がこもるような人の群れの中でもサーシャの服装は、膝上丈のキュロットと膝下まであるやわらかい皮製のロングブーツに上は肩に近いところまでの半そでという、動きやすく身軽な格好なのですごしやすい。
髪もサイドを短めカットして、長く残した後ろ髪は綺麗に編みこんで背中におろしているので、じゃまにならなく涼しい。
荷物は腰にベルトで留めた小ぶりで皮製のカバンに入っていて、手が自由に動くのも楽で、最近はこんな格好で街を歩くのが日常だった。

さあ、今日もお仕事しましょうか。

鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌な様子で歩いていく。
というのも、昨日の仕事がすごく良くて、久しぶりにかなり稼げたからだった。

さて、今日はどの人にしようかな〜。

歩きながら人々を見る。
でも、一人をじっと見たりはしない、視線を流しながら仕事になりそうな人を探す。

ふと、目を引く人を見つける。





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