[人間と翼人](1/4)
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全てが紅く色づく夕陽の中、ルカは陽に染まった彼女の姿を見上げた。
いつも、彼女の姿を思い出すときは暖かい陽の光を思い出す。
たぶん、彼女のイメージがそうだからだ。
ルカにとって彼女は親代わりのような存在だった。
本当の親は幼い頃に二人とも人間との戦争で死んでしまっていた。
自分のような子供は珍しくなかったから、特別寂しいとも感じなかった。
それに、ずっと終わらない戦いの中、それでも笑顔を絶やすことがなかった彼女の存在が、いつも自分を支えていた。
でも、身近な人の死がいつも傍にあって、大人たちはいつもピリピリしていて、どこか余裕がなかった。
それがなんだか辛くてルカは訊いてみた。
「ねぇ、戦争はいつ終わるの? 僕たちはなんで戦っているの?」
彼女はどこか困ったみたいに微笑んだ。
優しげで、でも強い光を宿した赤い瞳がこちらに向けられる。
「・・・それは、私にもわからないな」
「ええ〜?」
意外な答えに声を上げると、彼女は笑いながら手を伸ばし、ルカの髪をくしゃくしゃと混ぜた。
うわっと叫んで逃げると、彼女は楽しそうに微笑みながら屈んでいた体を伸ばし、ふと笑みを消した。
「でも・・・そうだな。たぶん、弱いからだろうな。人間も、私たちも」
「・・・弱い?」
意味が解らなくて訊き返す。
彼女は応えずに何かを思い出すみたいに、目を細めて沈みゆく夕陽を見て言った。
「・・・いつか、皆が強く、そして優しくなれたらいいのにな・・・」
呟く言葉は、どこか祈りのように響いた。
白い翼が優しく包み込むように羽ばたいていた。
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