自分と自分以外
[そこない](1/5)
 本当はみんな知っている。

 誰かの死は、あなたの願い。
 
 そんな事は無いなんて、言い切れない何かを抱えているでしょう、ひとつやふたつ。綺麗なばかりじゃ生きられないもの、踏んづけた何かの一つや二つはあるはず。
 おびえることはないわ。
 みんなそうだもの。
 みんな何か心当たりがあってバレないようにしているだけ。

 生きる為に死んでくれ、生き延びる為に死んでくれ。

 戦国時代も、世界大戦後も、平和は願いでしか無い。

 フワフワした色とりどりの風船。
 手の届かない、空に向かう、萎んだ物だけ地上に落ちて来る幻と思っている目標。

 死んだら負けだ。
 生きてればなんとかなる。

 励まされたのはまやかし。

 頼まれてまで、生きなければならないって、なに?それ?頼むってことは、なんのため?誰の為?

 我慢はした。
 頑張った。
 誰かを助けたこともあった。
 でも「なんとかならないのですか?」とずっと要求は続いて、要求は止まらなかったから、出せるものは何も無くなった。

 それを、あなたが悪かったのね、で片付いてしまう世界に、色とりどりの風船がフワフワしているのが、目障りだから、全部打ち落としてみた。

 希望、の中には何も入ってなかった。
 助け合い、の中も。
 仲良く、も、平和、も、空っぽだった。
 地上に落ちたらただの色のついたゴミだった。

 だからあんなに、手の届かない場所にあったんだな、と知る。
 
 本当は、みんな、知っている。
 それに手を触れてはいけない。  
だから手の届かない位置に、風船になって、いる。見た目も大事だから。みんなの希望だからって言うに相応しい形や色が必要なの。
 



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