キミを想う
○不可思議(1/5)
「みたところ具合は良さそうだな。決まりだ、30分後に出るぞ。支度しとけ」
「え…」
「いいな?」
顔を覗きこんで問われ、わずかに頷く。
コンビニに行くってのはこの人が勝手に決めたことで、俺は強制的に連れて行かれるだけ。
俺が頷いたのを確認して部屋から出て行く光牙さん。よくわかんねーけど、まぁ、実のところかなり腹減ってるから丁度よかった。
利用できるモノはとことん利用しないともったいない。たとえそれが、ヤクザである叔父の気まぐれな行為だとしても。
いまとのころ、この頭のネジがぶっ飛んだ強面の叔父には相当な価値がある。
安全面にやや難ありだけど、権力や金においては前の保護者より全然使えそうだ。
にしても…支度って?
あ
「支度って、コレ着んの?」
布団の頭元に綺麗にたたまれた服。
手にとって広げてみるとよくわかる。
すごい派手な柄物。そんでもって…中津さんがこんなの着てなかったか?
え、もしかして中津さんの趣味?
ねぇわ。
…ダセェんだけど。
着るの嫌だな。つーか、こんなん着て外歩けるかよ。…ダサすぎて浮く。目立つ。
「りゅ、う、きっ」
「日向さ…日向?」
いつのまにか戻ってきていた日向が部屋の前に屈んでいて、機嫌良さそうに手を振りながら俺の名前を呼んだ。
ん?なんか手に持ってる…?
「俺の服貸したげるよー。それ中津のでしょ?すげダッセーもん!そんなん着れなくね?」
俺の心の代弁者かと思った。
いまだに猫かぶりを継続しているため、俺が口に出して言えなかったこと。
本人がいないとはいえそれをサラリと言ってしまうあたり、さすがヤクザの跡取りだ。
「はい、コレ。投げていい?」
「いいけど…」
入ってこねーの?
…いや、別に部屋に入ってきて欲しい訳じゃない。そうじゃなくて、部屋の前から一歩も進んでこない日向に不信感を抱いた。
なにかトラップがしかけられてんのかな。
俺を罠にかけるための。
「クソ親父からさぁー、今日から一週間はお前に近づくなって言われたんだよ。お前の体調が悪化したら光牙に怒られるって。どっちが組長かわかんねーっつの。なぁ?」
いや、そんなヤクザ事情しらねーから。
俺に振ってんじゃねぇよ。共感求めんな、馬鹿か。…まぁ、これも口には出さねーけど。
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