DV、夜職、自殺、幸せ、不妊。
[平穏](1/17)
朝起きてリビングに降りる。
テーブルの上に用意されたご飯。
何も喉を通らない。
精神的に苦しい時はいつもそう。
母はそれを知っている。
一口ほどのご飯をよそったお茶碗が置かれた。
「少しずつでいいから」
久しぶりに触れる母の優しさ。
昔は当たり前だったこの日常が
どんなに幸せなことだったか。
涙が止まらなかった。
携帯はできることなら一生電源を入れたくなかったが、これで全てが完全に終わったわけではなかったためそういうわけにもいかなかった。
充電器に繋ぎ、恐る恐る電源を入れた。
不在着信80件以上。
もちろん全部DV男からだった。
ラインも恐ろしい数の通知。
だが夜でいったん諦めたらしく、電源を入れたときにはもう電話がかかってくることもラインが連続で来ることもなかった。
少しほとぼりが冷めたようだった。
通知画面でラインの内容を確認すると、最初と最後では彼氏の様子が全く変わっていた。
最初はとにかく怒り狂い、私を殺すという主旨の文が続いていたが
時間が経つにつれ
怒りよりも悲しみや後悔の言葉を並べるようになり、
「今から車で壁に突っ込んで死ぬ」
「今入院しとる」
「誕生日プレゼントも本当は用意してた」
「もうプレゼントは投げ捨てた」
などと嘘をつき、私の気を引こうとしていた。
本当は突っ込んでもいないし入院もしていないしプレゼントを投げ捨てるも何も最初から用意などしていない。
私の良心につけ込んだひどい嘘だと思った。
そして最終的には
「ごめん」
「俺が悪かった」
「もう暴力もせんしちゃんと働く」
「◯◯の親に認めてもらえるように頑張る」
「もう一回チャンスをくれ」
「こんなにいい女は他におらん」
「 俺◯◯がおらんとダメなんよ」
「もう怒らんから連絡して」
と、 反省と許しを乞う言葉で終わっていた。
よく言えたよな。
「お前なんかよりええ女なんかいっぱいおる」
「クソみてーな女じゃな」
「おもんねぇ」
「一緒におってやっとる」
「おめーとおったらめんどい」
「こんな女いらん」
今までされてきた数々の悪罵が蘇る。
こうなった途端に手のひら返して都合のいいことばかり言うな。
そう思った。
私は、
「電話は出ないし、もうあの家にも戻らない。
もうよりは戻せない。」
と自分の意思をハッキリと伝えた。
弱い私はもう居ない。
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