少年少女はエゴに没する
 

胎動に涙を浮かべる (3/11)





「……で?僕は一体何をすれば良いわけ」

腕をゆるりと組み、八霧は眼を細めた。
それに答えたのはもちろんぶーたれている睦月ではなく菊竹。


「んー、大まかに言えばここで睦月と一緒に暮らすってだけかな」

両手を広げ、マンションの部屋を指しながら菊竹は云う。

「それさえしてくれれば、後はもう好き勝手してくれれば良いから。ま、何か分からないことがあったら睦月に聞いて」


八霧はそれだけ聞くと頷きもせずに勝手に靴を脱いで部屋の中へと入って行った。
その後姿がリビングのドアに消えた瞬間、睦月は菊竹に詰め寄った。


「おい菊竹!お前正気か!?」

「えー?何が?」

「なんであんな男が管理人なんだよ!」

「でも別に僕チンが最終決定したわけじゃないからさあ。こればっかりは、ね?」


へらり、と能天気に笑う菊竹に、睦月はさらに言い返そうと息を吸う。

と、そこに先にリビングに入って行った八霧の声。

「チビデブ。ちょっと来て」

その声に睦月と菊竹は顔を見合わせた。



「睦月。八霧君が呼んでるよ」

「……ってチビデブってあたしのことかよ!」

「ほらほら、行っておいで」

菊竹にやんわりと背中を押され、睦月は渋々リビングへと向かった。



「……あたしの名前は睦月でございますけど」

八霧は20畳ほどの広々しいリビングに鎮座しているソファの前に立っていた。


その後ろ側に見えるのは壁一面のほとんどがガラス張りになっている大パノラマの窓だ。
何よりもこの部屋で存在を主張しているその窓ガラスからは、首都圏の高層ビル群が見える。


ニョキニョキと建つそれらは、地面から生えている大量の玩具に見えない事も無い。





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