11_会長と逢引き (1/28) あれから、しばらく経った。 会長とはあれきり話してなくて、それでも咲は何も言わなかった。 それに、佐藤くんも何も聞かずに普通に接してくれてる。 泣かなかった。 というより、理解するのも苦しくて全てを放棄したからか、泣けなかった。 もう、来週からは春休みに入る予定になっているのに。 あれから何の音沙汰もないのは、もうどうでもよくなったのか。 はたまた、……最初からどうでもよかったのか。 「あの、神流先輩」 ハルちゃんが眉を下げて目の前に立っていて、はっと我に返った。 「あ、ごめんね。新しい本入ったから、図書案内書かないといけないんだったっけ」 慌ててA4の下書き用紙に図書案内をスラスラと書いていく。 ハルちゃんは何か言いたげにしていたけれど、黙って作業に入った。 それは今のあたしが聞く耳を持っていないから。 ちゃんとわかっているものの、やっぱり聞きたくないことだってある。 ハルちゃんに話すのもいいかもしれない。 だけど、彼女はあまりにも正論で切り返してくる。 それが時として苦しくなるのは、あたしも人間だから許して欲しい。 「これ、お願いします」 すっとカウンターに置かれた本を受け取り、ラベルを読み込ませる。 名前を聞こうと思って顔を持ち上げて、固まった。 ちょっと申し訳無さげに眉を下げた彼は、後ろ頭を掻きながら笑った。 あたし、最近色んな人にこんな顔させてるなあ。 「……二宮くん、」 名前を呼ぶ。 「ごめんね、あれっきりになっちゃって。俺も……斗真も」 ふるふると首を横に振って、本を差し出した。 貸し出し期限は1週間です、とお決まりの言葉を返す。 二宮くんは笑って、返しに来るよとだけ言った。 「話、出来ないかな?」 「……今はちょっと」 :::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::: Special Thanx! :::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::: ⇒作品レビュー⇒モバスペBook :::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::: ←back |