▽ 第十三章[拷問のち](1/15)
「あれ、沖田さんまだ起きてたんですか?」
皆が寝静まった頃、なかなか寝付けなかった私に、同じく寝付けなかったのであろうお幸さんが声をかけた。
「はい。そう言うお幸さんも、まだ寝ていなかったのですか?」
「あはは、なかなか寝付けなくて……こんな風に皆でお泊りって初めてだから興奮しちゃって……」
「私もです」
明かりの消えた暗い座敷に、がらす窓から月明かりが差し込み私とお幸さんを淡く縁取る。
二間続きの座敷。
出入口のある側に私と南部先生が、奥の座敷にお幸さんと涼子さんが布団を敷き、二組に別れて眠っていた。
「……沖田さん、ちょっと部屋から抜け出しません?」
悪戯をした童(わらし)のように笑うお幸さん。
「んごおおぉぉ……ぐごおぉぉおぉ……」
隣りで寝ている南部先生は高鼾(たかいびき)をかいている。
「良いですね、行きましょう」
「夜になると少し涼しいけど、やっぱり暑いですね」
お幸さんの声と、じゃりじゃりと玉砂利を踏み締める音が響く。
少しばかり開(ひら)けたそこは、こじんまりとした旅館の庭園になっていた。
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