▽ 第六章[平成の世](1/64)
気付くと
私は深い闇の中にいた。
(ここは、いったい…)
右を見ても左を見ても
上も下も
漆黒の闇が広がっている。
(私は…確か、池田屋で…)
そこまで考えて気付いた
(私は死んだのでしょうか?…では、ここは死後の世界…)
浄土でないのは明らかだ
だが
(地獄…でもないようですね…)
いったいここは何処なのだろうか。
周りを見渡してもその答えは出る事無く
(誰か!誰かいませんかー!)
自分でも意識しないうちに歩み出し、その足は次第に速度を増す。
(近藤さーん!土方さーん!!)
走っても走っても闇しか見えない
そもそも足音すらしない。
(永倉さーん!原田さーん!!平助ー!!!)
どんなに声を上げても、それは木霊すばかりで返事が返ってくる様子は無い。
(誰か……。誰も、いないんですか……)
どのぐらい走ったのか分からないが、不思議と息切れはしなかった。
やがて、私は走るのを止めた。
(この先、ずっとこの闇の中にいないといけないのですか…?)
天を仰ぐ様に上を向くと、闇が支配しているはずのこの世界に、ぼんやりとした小さな白い光りが現れた。
(あれは?さっきまで何も見えなかったのに…)
目を凝らし白い光りを凝視すると、それは徐々に大きな光りとなり
(あ………)
私の身体を優しく包み込んだ。
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