東方 幻想龍戯 〜Awakening of the Calamity Doragoon〜

1:知らない世界 (1/4)




…風の音が聞こえる…

…木々の葉を揺らし、僕の頬を撫で、どこへともなく去っていく、一陣の風…

「………っ」

目を開けた。

視界いっぱいに青い空が映る。

「寝てた…のか…?」

横たえていた体を起こして、辺りを見回す。

周囲には、鬱蒼とした森ばかりが広がっていた。

「………」

ここ…どこ?

おかしいな、寝る前は確か――

…確か…?

…どこで、何をしていたんだ?

僕は何者なんだ?

分からない…自分自身のことなのに、何も…

「記憶…喪失…?」

まさか…そんな…

「っ! …ん?」

パニックに陥る寸前で、右手が何かに触れた。

…何だろう?

僕の所持品なら、記憶が戻るきっかけになるかもしれない。

すがるような思いで、手元に視線を落とす。

「…何これ?」

その手に握られているのは、一振りの刀だった。

「何でこんな…?」

疑問を感じながら、なんとなく柄に手をかけ、引っ張ってみる。

「抜けない…?」

力を込めて引いてみても鞘は動かず、刀身がその姿を現すことはない。

「錆びてるのかな…」

刀を抜こうと奮闘すること数分間。

結局刀を抜くことは出来ず、分からないことが増えたばかり。

徒労感が残っただけだった。

…とにかく、誰かに事情を話して助けてもらわなければ。

ここがどこなのか分からないままでは、話にならない。


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