扉の向こう

■[もう一人](1/30)

―――もう一人―――

　スケッチ遠足なんてどうしてあるのだろうか。

必要の無い行事だと思う。

遠足に行きたいが為に、「風景のスケッチをして、美術の勉強をする」という取っ手をつけたような理由で生徒会が提案した行事であろう。

「暑いっ。」

唯がクラスの列から外れた所を歩きながら、隣を歩く自分にぼやいた。

「何でこの時期にやるかなあ。夏真っ盛りって感じの時期なのに。」

彼は何のためらいも無く、生徒の大半が思っているであろう事を口にした。

「秋のスケッチ遠足とか、ありがちで嫌だからじゃない。芸術の秋とか言ってさ。」

「なるほどねー。でも、遠足は涼しい時期がいい。」

普段は人と同じ事をする事を嫌う彼が、自分勝手にそう言った。

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