あ、はい。

○蚊帳(1/13)




※坂巻side







怪訝そうな2人の視線が俺に向き、自分がとんでもないことを口走ったのだと気付く。

今の言い方はなかった、よな?…つーか、声もガチトーンになっちまったし。

「坂巻、お前、」

「あー」

眉を顰めて凝視してくる2人から俺は視線を背けた。これはひょっとすると、傷付けたか?

…でも、撤回する気はない。

今のは本心だ。

言葉にするつもりこそなかったが、コイツラを本気で気持ち悪いと思ったのは事実。

『今のは違う』

とか

『冗談だ』

とか。

取り繕う方法はいくらでもあったが、本心が邪魔をしてどうにも言い訳できない。

嘘をつくのは昔から苦手だ。

結果、うまく喋れずに黙り込む。

そんな俺に

「キモいって、本気で?」

と、半笑いの宇崎が問いかけてきた。

氷河も腕を組んで苦笑している。

…あれ?

傷付けたと思ったんだけどな。もしかしてこれ、からかってると思われてるのか?

それとも、呆れてると思われてる?

どちらにしても本気だと思ってないな。氷河も宇崎も、まだ本心だと気付いてない。

…だったら、ちょうどいいじゃん。

いつもみたいに“うそうそ。本気にすんなってー”って、笑って言えばいい。

…言えればよかったのにな。

そうすりゃ、ふざけんなって2人の制裁受けて。笑って、誤魔化して、終わった。

お前らもきっとそれを望んでいただろう。

でも俺は

「わりぃ」

とだけ発言して、1人屋上を後にした。









- 34 -
前n[*][#]次n
bookmark
/66 n


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[edit]

[←戻る]