あ、はい。
○デート(1/6)
で、だ。…確かに、俺は別にいいって言ったよ。言ったけどな?
なんで、この組み合わせになってんだ?
「氷河、お前の連れなんなの」
「うっせーよ」
宇崎の連れの方こそなんなんだよ、さっきからずっと秀馬にベッタリじゃねーか。
秀馬の肩に腕を回して歩く宇崎の連れ(さっきの話からして恋人らしい)。
2人で前を歩くから、必然的に俺と宇崎が後ろを並んでついていく形になっている。
時折聞こえる笑い声とか、なんかすげー楽しそうだし。…何の話してんだよ。
ちっ、面白くねぇ。
やっぱ2人がいいって言えばよかった…って、は?なに?今の俺の思考?
…乙女かよ、気持ちワリィ…。
「伸一、あとで絶対しばく…」
「宇崎…お前」
これはあまりに意外すぎる。まさか、恋愛になるとかなり怖い奴だったなんて。
長いこと一緒にいたけど知らなかったな。
「他のやつとつるんで俺んこと放置かよ、あの馬鹿。ぜってー許さねぇ」
「落ち着け」
俺だって今の状況に若干苛ついてるし、気持ちはわかんねーこともないけど。
それでも、呪詛を唱えるほどではない。
メキメキとペットボトルを握りつぶす宇崎を横目に、俺は深くため息をついた。
「お前はむかつかねーの?」
「は?」
「放置されてんのに、なんでキレないわけ?氷河らしくないじゃん」
嫌なことがあったらとりあえず暴れる。
理屈でこられれば暴力でねじ伏せる。
理不尽に力で解決する。
それが、炎豪氷河。
今までそうして暴力1筋できたんだ。それは言い返しようもねぇ事実。
だから、黙って大人しくしてるなんて俺らしくねえってお前が言うのもわかる。
自分でも思うしな。
けど、仕方ねーじゃん。
「暴れんのは簡単だけど。…んなことして、秀馬に嫌われたくねーから」
一度そう思ってしまったら、拳1つ握れねーし自然と穏やかにもなんだよ。
おかしーだろ?
笑うなら笑え。そのかわり、笑ったヤツは片っ端からぶっ飛ばしてやる。
俺だって本気なんだっつの。
「なぁ、氷河」
確実に笑い飛ばされると思ったのに、宇崎が妙に真剣な声音で名前を呼んできた。
準備していた拳を緩める。
「なんだよ」
「…そんなに好きなら、仕返しようぜ」
仕返し?
って、なに?なんの?
つーか、誰に?
宇崎の言葉の真意がわからず眉をひそめる。好きなら仕返しの意味がわかんねぇ。
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