あ、はい。

○理由(1/5)











放課後。

チャイムと同時にロッカーからカバンを取り出し、肩に斜めにかけた。

確か4組だったよね。

あれ、4組ってどこだっけ。つーか、3年の校舎って1つ向こうであってたかな。

全く関係なかったから覚えてないわ〜。

「秀さーん」

「あー?」

教室を出ようとしたところで、後ろから声をかけられて振り返る。

やっぱヤマシー。…まぁ、俺のこと秀さんて呼ぶのヤマシーだけだしね。

「ゲーセン行かね?」

「先約あるからパス」

「えっ!?」

なに、その驚いた顔。俺に先約あんのがそんなに意外だったかな。

「えー、先約?マジ?秀さんが?へー、隕石降ってくんじゃねぇのー。やめてよー、マジ。で?その約束してる相手、誰よ」

うーわー、興味津々って感じで身を乗り出して聞いてくるヤマシーうざ。

詮索されんの好きじゃねーのに。ヤマシーじゃなかったらぶっ飛ばしてるな。

「相手は氷河だけど?つか、俺だって誰かと約束することくらい…」

「なかったよな」

「ないね」

「だろ?」

「うん」

思い返してみたら、ヤマシー以外の誰かと約束したことなんて一度もない。

なにひとつ、ない。

その場でなにかしようって誘われて、その時の気分次第でやるもやらないも決めてた。

「炎豪氷河ってそんなすげーの?え、つかなに?脅されてるわけ?」

「はぁ?」

脅されてる?俺が?

なにそれ。

「キレんなよ。俺は心配してるだけだって」

「キレてないし、脅されてもないけど」

普段の調子で答える。

悪気はないらしいし、自分自身なんでそんなにイラついたのか説明がつかなかったから。

「おっけ。じゃ、今日は無理なんだなー」

「無理。あ、3年4組ってどこ?」

「え?3年4組?」

「そー、氷河」

ついでと思い聞いたら、ヤマシーは少し考える仕草をしたあとニヤリ笑った。

それはもう凄く嫌な顔。

絶対なんか企んでんじゃん。

「俺も一緒行く。教室の場所教えてやるよ」

「ヤマシーさー…」

「えー?」

「や、なんもない」

口では勝てねぇんだよな。

だから、黙る。

何企んでんの?

なんて、俺が聞いても意味ねぇだろうし。

結局、俺はどうしてもついてくと言ってきかないヤマシーと2人で、3年4組のある校舎まで移動することにした。




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