散る桜の如く
三、鉄と歩と入隊準備(1/59)





 ―――冷たい。


 なんか背中が熱いのに、ひんやりする。


 ふと目を開けると壁が見えた。


「あ、気がついた?」


 声のする方に目を動かすと見知らぬ少年がいた。


 私よりも年下のまだ幼い顔立ちをした少年は、私と目が合うとニッと笑った。


「俺、市村鉄之助。土方さんの小姓やってるんだ」


 土方さんの小姓?


 いや待て。


 それはともかく、なんで私は寝てる?


 しかも、うつ伏せで。


 訳が分からずとりあえず起き上がろうとすると、市村君に慌てて止められた。


「ま、待ったっ!!あの、一ノ瀬さん今何も着てないからっ!!」


 言われて気づいた。


 胸に巻いていたサラシも外され、私は今着物を上から掛けられてるだけの状態だ。




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