2人のかくしごと
[愛しさ](1/20)
通常side



Ns「先生お疲れ様です。まだ帰ってなかったんですね。」




俺が今日ここに出入りするのは3回目。





「うん。一ノ瀬さん起きた?」






Ns「それがまだなんです。」





もう21時前



芽愛の手術は4時間くらいで終わった。



15時くらいには終わったから夕方くらいには麻酔から覚めるだろうと思ってたのに。





「バイタルは?」




Ns「安定しています。心拍も70台くらいで、たまに不整もありますけど一時的ですぐ同調律に戻ります。」




「そっか。



ちょっと直接診てくる」





俺は彼女が寝ているベッドの脇に立った。






「芽愛、いつまで寝てんだよ」




そっと芽愛の手を握る





あと3時間で今日が終わっちゃうだろ。





俺、芽愛にどうしても伝えたい事があるんだ。





明日になっても俺の気持ちが変わることはないけど、出来れば今日伝えたい。






今日だからこそ伝えたいんだ。





「戻ってこいよ、芽愛」





俺は握った手に力を込めた。




するとわずかに彼女の指が動いた気がした。






「芽愛?」




指の動きが徐々に大きくなり、今度は彼女の手のひらが俺の手を包み込んだ。






そしてゆっくりと開けられた目




俺を捕らえた目は笑っていて



酸素マスクの下から聞こえる声を聞き逃すことはなかった。





芽愛「先生、私、生きてる」



まるで生きてることを確かめるかのように俺に触れる





「ああ、生きてるよ。」





自然と彼女の目尻から涙が垂れた。




「泣くなよ」




俺はその涙を拭った。



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