二人三手!
[繋がる鎖](1/3)
ある住宅の、一室。もとい、浴室。
その狭い空間で、至近距離で触れ合う二人の男女。
浴室からは、微かな湯気と熱が立ち込め、二人を包む。
…………………………。
…………………………………………。
「ねぇ、七美ちゃん?早くお風呂入ろうよ?汗臭くなっちゃうよ?」
低く、色っぽい、どこか子供をあやすような、男の声。
何コレ
「昼間あんなに動いたからね。女の子は身嗜みをしっかりしないとダメだよ?」
俯き、黙り込むあたしの前髪を、さらさらと手グシで撫でた。
何だ、コレ
「大丈夫だよ。俺は目はつむってるか……」
「何で、こんな事に、なってるんだよおおぉぉぉ!!!!!!」
意味が!わからない!! かくなる上は……!
あたしは左手を、力の限り振り上げた。
「ちょ、待っ、七美ちゃ……!」
ジャラリと、鎖の鳴る音が反響する。ガクンと宙に浮く男の身体。
有無を言わさず、あたしは左手を振り落とす。男は鎖に引っ張られて、音速で地面へと叩きつけられた。
尋常ではない衝撃音が響き渡る。
「ぐぁっ!?」
……男は全身を強打し、意識を失ってしまった。 ちょっとやり過ぎた、かな?
あたしは改めて、左手を見つめた。
……鋼鉄の輪っかが、手首を包み込んでいる。
そしてそこから、短く鎖が伸びている。
目の前で気を失った男の右手首にも、あたしと同じ輪が。
あたしの鎖は男の腕の輪と繋がっている。
つまり
あたしの左手と、この男の右手は
手錠で繋がっているのだ。
本日、どういう訳か、あたしとこの男は、頑丈な手錠で繋がってしまい、離れられなくなってしまったのだ……。
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