短編集(風)

◇[創造主の苦労](1/14)

 多くの者から聖女と呼ばれているエリザ。それにより、彼女のもとには多くの人間達が集まってくる。

 それは、信者であり聖職者。時として、下級・中級の精霊も覗きに来るほどだ。

 そして――

 今日エリザのもとに訪れたのは、リゼルだった。

 突然の訪問に、エリザは目を丸くする。

 しかし、相手は会いたかった人物。エリザは自室に通すと「何故、自分のもとへ」と、質問した。

「暇だから」

「暇……ですか」

「そう、暇」

「でしたら、どうして……」

「いけない?」

 その言葉に、エリザは何も言えないでいた。そもそも、リゼルが自身のもとへ来る理由がわからない。人間界へ来たというなら、他の場所へ行けばいい。

 美しい場所や楽しい場所は、沢山ある。それだというのに、リゼルはエリザのもとへ遊びに来た。それは一体、どうしてなのか――

 オドオドとしたエリザの態度に、リゼルは苦笑しながら事実を答えた。その理由とは「行きやすい」というもの。

 リゼルとエリザの付き合いは、思った以上に長い。その為、気安く接しやすいという。

「精霊界では、ゆっくりできない」

「何か、問題でも?」

「精霊達が、束縛する」

「そ、束縛ですか」

 聞き慣れない単語に、エリザの声が裏返ってしまう。精霊が、創造主を束縛――どうして、そのようなことをするのか。しかし、理由は簡単だった。それは、精霊界に止まってほしい。

 他の場所へ行かないでほしい。そのような気持ちが、含まれていた。その為、束縛する。

「だから、暇だよ」

「創造主は、大変ですね」

「人間のように楽しめると、いいものだよ」

 リゼルは不老不死として、永遠の時間を生きていかなければいけない。それだというのに、一箇所に止まってほしいというのは酷なこと。

 人間界を巡り遊ぶくらい認めてほしいと思うが、彼等――特にレスタは、首を縦に振らない。それどころか、必要以上に束縛をする。


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