田島先生と坂田君の3年間。
一年生7月(1/13)






ジメジメする梅雨がやっと明けたと思えばもう暑いだけの夏。


教室から職員室までの移動だけで額にじんわりと汗が滲む。


「たじまりおはよ」


「はい坂田君おはよう」


笑顔で手を振る坂田に右手だけ挙げてそそくさと通り過ぎる。


「適当すぎない?ちょっと待ってよ」


移動時間は出来るだけ短縮したいくらいなのに、ここ最近坂田がやたらと話しかけてくる。


「どうかしたの?」


仕方ないから足を止めて振り返る。


「もうすぐ夏休みだよね」


「えぇ、その前に期末テストがあるけどね」


「一気に現実に引き戻すね」


大抵こんな感じの世間話。

教室の中で話しかけてくれればいいのに毎度こうして廊下で呼び止められる。


「先生勉強教えてよ」


「国語はばっちりでしょ?」


立っているだけでも暑いくらいなのに坂田はいつも汗もかかずに涼しそうな顔をしている。


「うん、国語はばっちり!ちゃんと授業聞いてるし!」


何故か嬉しそうに坂田は胸を張る。


「自信満々ね」


「モチ!」


無邪気に笑う坂田を見て、私もつられて微笑む。

こうしていると本当に素直で可愛い生徒なんだけどなぁ。





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