今(1/4)
さっきまでいた場所。
モノトーンで飾られた部屋は、とても居心地が良い。
家具は必要最低限の物しか置かれてない代わりに、本棚がズラリと並び、隙間なく本が入れられている。
翔大さんの性格がよく現れている。
「珈琲でいいか?」
「あ、いや、気ぃ使わなくていいですよ。」
「まぁ珈琲しかないんだが(笑) その辺座っててくれ。」
食器棚からカップを取り、ティ○ァールでお湯を沸かし始めた。
最初はただの暇つぶしだったんだと思う。
喜一とはあんな事があり、緑川には愛想を尽かされ。
俺は精神的にどうかしていた。
だから、男に手を出した。
実を言うと、翔大さんが始めての男じゃない。
憂さ晴らしに何人かの男を抱き、その時に偶然会ったのが、翔大さんだった。
でも翔大さんは他の男とは違う。
身体を繋いで終わるだけじゃなかった。
翔大さんは忘れているだろうけどね…。
「悪い、待たせたな。」
「いえ。こちらこそ気を遣わせてしまって、すいません。」
珈琲が入っているカップをテーブルに置き、翔大さんは俺の目の前に座った。
「お前……雰囲気変わったよな(笑)」
フッと笑いながら、翔大さんは俺の眼を捉えた。
「そうですか? あんまり自覚はないんですが…」
「会って直ぐの時とか…あん時…とか、もっとチャラついた奴かと思ってた。」
「チャラついた…ですか。でも確かにそうかもしれません。あなたを軽蔑していたのかも。」
「軽蔑…?」
「知らない男に抱かれて、悦んでるんだって。」
「…悦んでるッ?!」
「あ、んー、はい。あの時はね、そう思ってたんです。でも今は違います。ちゃんとあなたの良さを知れましたから。」
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