ぼくとマイク
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冬の終わり、隣の空き部屋に新しい入居者が入った。数日後挨拶に来てくれたとき、僕はあいにく仕事でその時は会うことができなかったんだけれど、その週の日曜、再び新しいお隣さんが挨拶にきてくれることになった。ソワソワしているとチャイムが鳴って、扉を開けるとお隣さんが立っていた。

「こんにちは!あの、クッキーを焼いてきたんだけど、上がってもいい?」

僕はたまげた。
クッキーを焼いてきてくれたことにじゃなく、その姿がどう見ても、フカフカのぬいぐるみだったからだ。ちょうど僕のひざこぞうくらいの背丈で、おもちゃ屋にあるようなぬいぐるみにしか見えなかった。彼(というべきなのだろうか)が訝しげに僕を見たので、僕は慌てて咳払いをした。

「もちろんどうぞ上がってください。紅茶をいれますね」

砂糖はみっつで、と彼(性別はどっちなんだろう)は言い、「君の玄関、センスがいいね」とマジマジ見ながらフローリングに上がった。

「それは、どうも」

扉を閉め、僕は彼の後ろ姿にチャックがないか確かめたが、あいにくとそんなものは見受けられない。僕は「なぜ」と興奮気味につぶやいた。新しいお隣さんが、ぬいぐるみだなんて。


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