ホンモノを教えてあげる
[愛してる](1/11)
第十一章

【愛してる】


夏休みが終わり、
二学期に入って


季節は秋になった。




蒸し暑く感じていた空気も
いつの間にか、冷たさを含んで

乾いたものになる。





「そういえば

夏服ってもう着ること無いんだね」



実和は熊の手で落ち葉をかき集めながら
ポツリと呟いた。



「何言ってるの今更」




あたしはチリトリを持って、実和の集めた落ち葉の前にしゃがみ込む。





「だってさぁ
何か秋って寂しくならない?」




「解るけど…」




「こないだ
小学校の時の同級生に会ったんだけど

世間の受験生は大変そうだね」



「うん」



「まじ附属で良かったよ」


実和はそう言いながら、かき集めた落ち葉を熊の手でチリトリへとかき込む。


「わたし中学受験だけで死にそうだったし」


実和が笑った。

あたし達の通うこの学校は、私立の中高一貫教育で、附属大学もあるから
ほとんどの生徒は大学受験とは無縁なんだ。



「あ
そういえば
綾音パンツ見えてるよ」



集めた落ち葉をチリトリに全て納めたところで
実和がそう指摘する。

あたしは慌てて立ち上がった。



「もっと早く言ってよ!」



「赤とか
やらしい〜」


実和がそう言って笑うから、
あたしは同じ掃除当番の男子に聞こえていないか周りを見回して確かめる。


「もう!
実和!!!」



あたしが怒った素振りでチリトリを持ち上げると、実和は「ごめんごめん」と言って、他の掃除当番の子達のところへ走って行く。



「実和!!」


チリトリからコンテナにゴミを捨てて、あたしも実和の後を追った。



二学期も

もう中頃。



あたし達の
最後の高校生活は折り返し地点を過ぎていた。

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