ごめんね、ありがとう。[1ページ完結]

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「ごめんね、ありがとう」

 もう何年も変わらない彼女の口癖。


 ある日、ふと思い立って
 彼女に意味を聞いてみた。


「ごめんで終わらせたくなくて。
 ありがとうの方が好きだから」


 彼女はバレてたのね、
 と困ったような笑顔で言った。


 そしてもう1つ、
 と付け足すように言った。


「ありがとうなんて素直に言うの
 難しいじゃん。なんか恥ずかしいし。
 だからごめんを先に言っておくの」


 正直びっくりした。
 彼女には失礼かもしれないけれど。


「はは、変かな?」


 そう言って頭をかく彼女。
 これも何年も変わらない癖。


 なんだか居ても立ってもいられなくて
 自分の方へと彼女を抱き寄せた。


 付き合って何年も経つのに、
 彼女を腕の中に迎えたのは初めてで。


 彼女が腕をそっと俺の背中へ回す。
 そんな動作1つにも思わず頬が緩む。



 …彼女を失いたくない。



 この気持ち、
 どうしたら彼女に伝わるだろうか。


 ふと先程の会話を思い出し、
 頭の中で彼女の言葉を反芻して。


「ごめん、いつもありがと」
「…ね、簡単でしょ?」


 腕の中の彼女が、はにかんだ。





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