レンズの詩(1/1)
だいたい、本当につらい時は
夜空なんて見上げない。
会話が続かないまま沈黙の輪郭が
浮かび上がってきて、慌てて
月が綺麗だねとか言うことはある。
この街は華やかじゃないけど、
君が夜空に向けたレンズに
星の光が届くまで、
もう少し時間がかかるかもね。
待っている時は焦れったくて
胸がくしゃくしゃになるけど、
この長いようで短い時間が
私は生きてるって思わせてくれる。
期待外れな結末は嫌だけど、
それが明日も生きていく理由になる。
いちいちそう思わなきゃ、上手に笑えない。
濃紺のスカートに空いた虫食いみたい。
ロマンチックな喩えは私に似合わないから、
こうとしか言いようがない。
綺麗なものこそ写真で撮っておきたいのに、
どんなに技術が進化しても、
私たちの瞳には敵わないんだね。
きっとすぐ忘れてしまうから、
何度でもおなじような夜を見つめよう。