略奪したい (1/6)
四月半ばになると、
最初は緊張していた一年生たちも高校生活に少し余裕が出てくる。
少し派手目な格好をした一年女子の二人が学校の手前の十字路のところで
鏡を覗きこんだり、
ビューラーで睫を上げたりして、スタンバイ状態。
そこへ一人の女子が合流する。
「来た来たっ。吉沢先輩、来たよっ」
「今日はこっちのルートで待って正解だったね」
なんて話し合っていると。
彼女たちから見て左の曲がり角から、尚が親友の廣澤と一緒に喋りながら姿を現した。
彼らは眠そうしながらも会話をしている。
「吉沢。本当にバイク買うの?」
「んー。今、バイトで軍資金ためているところ」
一年女子たちの特有の香りが鼻につくな、と思いつつ、尚は彼女たちには一切視線を向けずに通り過ぎていく。
反対に廣澤のほうが、一年女子たちをガン見しながら通り過ぎた。
そして、彼女たちは廣澤を見ずに、
尚の端麗な顔立ちと品のある雰囲気にうっとりとしている。
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