ドロップ
[1章 うそつき](2/14)






透きとおった雫のモチーフに、ちいさく雪の結晶の柄が彫られている、それ。


あたしは知っている。それは彼が、お付き合いしている人から もらったものだということ。




「好き。好きだよ、七瀬くん」




そうやってあたしが、彼の肩に腕を絡めながら
自分より五つも年上の彼をくん付けで呼ぶのは、

彼よりも三つ年下の彼女が、彼をさん付けで呼ぶから。




「俺も萩花のこと、好きだよ」




そういう彼はネックレスから手を離さないし、あたしを抱きしめてくれることもしない。




「愛してるよ、あたしは貴方のこと、いちばん好きだから」




あたしは毒のようなその言葉で、彼をじわじわ浸していく。


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